協会概要

会長挨拶

診断士は“触媒”であれ 企業に伴走 改善へ導く

群馬県中小企業診断士協会会長 吉村守

 新型コロナウイルスの世界的な流行やロシアのウクライナ侵攻、物価高騰など外部環境が一段と厳しくなる中、多くの中小企業が生き残りをかけて経営方針を模索しています。こうした状況下で中小企業の支援者である中小企業診断士(以下、診断士)の役割が今までにも増して重要になってきていると感じます。今回は、経営改善における診断士の役割について考えます。

 私が所属する一般社団法人群馬県中小企業診断士協会は現在、診断士資格を持つ110人の会員で構成されています。大半は経営に関する学びだけでなく、さまざまな職業を実際に経験された方であり、多様な中小企業の課題解決や経営改善支援にその能力と経験、人間力などを役立てています。

 人に人生があるように、企業にも一生があります。私たちは何かの縁で企業の一生の、ある時期に出合います。そして起業を考える人には創業支援を、厳しい経営状態にある企業には収益力回復や事業再生支援を、承継時期の企業には事業承継支援を行います。関係機関などと共に幕引きの時(終業)に寄り添う場合もあります。

 会員は企業との出合いに備えて日頃から経営支援について学び合い、切磋琢磨(せっさたくま)し合っています。

 協会には、デジタル化をサポートするIT研究会をはじめ、旅館業経営、食農ビジネス、診断技法、ローカルベンチマーク、マネジメント、研修事業、医療福祉、診断士資格取得支援、企業内診断士活躍の10の研究会があります。これらの研究会では、会員が自ら担当した事例を発表し、互いにアドバイスし合うなど、支援姿勢や支援スキルを磨き合っています。

 人の健康は医師が診ますが、診断士は企業の経営状態を診断し、処方箋(改善策)を企業と一緒に考えます。

 私は、診断士が一方的に処方箋を出すのではなく、企業と診断士が一緒になって現状を分析し、問題や課題を洗い出し、問題の原因を突き詰め、企業自身が診断士と共に「腹落ち」した状態で自らの処方箋(改善策)を導き出すことが大切だと考えています。

 これは私見ですが、診断士の役割は、企業の「腹落ち」を促進する触媒になることだと捉えています。触媒とは、化学反応においてそのもの自身は変化しないけれど、反応速度を変化させる物質のことです。企業の進む方向を最終的に決めるのは企業自身であり、診断士はその過程に寄り添い、後押しする存在なのです。

 私は会社勤めの頃、悩んでいた時に「真剣になっても深刻になるな!」と先輩から声をかけてもらい、救われた経験があります。

 企業の皆さん、経営課題の解決には私たち中小企業診断士が寄り添うことができます。深刻にならず、一緒に「腹落ち」した状態で経営改善に向かえるよう頑張りませんか。