• TOP
  • NEWS
  • 【業務改善】小規模企業のデジタル化推進:現実的な処方箋
NEWS

【業務改善】小規模企業のデジタル化推進:現実的な処方箋

中小企業診断士 反町 哲弘

多くの企業でIT化を推進してきた経験から見えてきたのは、小規模企業特有のデジタル化への壁です。中堅以上の企業とは異なり、コストやIT人材の不在といった物理的な制約に加え、業務プロセスの未整備やIT活用経験の乏しさからくる根本的な考え方の相違が、デジタル化を阻む大きな要因となっています。

小規模企業が抱えるデジタル化の課題

小規模企業がデジタル化を進める上で直面する困難は多岐にわたります。まず、限られた予算の中でIT投資を行うことへの躊躇があります。また、ITスキルを持つ人材の確保や育成も容易ではありません。

さらに深刻なのは、日々の業務が標準化されておらず、その結果としてIT化の設計自体が困難になっている点です。小規模企業は「柔軟性」が強みといわれますが、この柔軟性と生産性はトレードオフの関係にあります。たとえば、交通社会において交通ルールがなければ渋滞や事故が多発するように、業務にも明確なルールがなければ混乱や効率低下が起こります。したがって、生産性を高めるためには一定のルールづくりが不可欠です。従来の柔軟な(つまり、場当たり的な)アナログ運用に固執せずに業務をルール化することで生産性が向上し、さらにIT活用への道筋が開けるのです。

技術⾰新がもたらした低コスト化

近年のIT環境の劇的な変化により、⼩規模企業のデジタル化に新たな可能性が⽣まれています。AIの活⽤、ノーコードツールの普及、クラウド環境の充実といった技術⾰新により、従来では考えられなかった低コストでのIT活⽤⽀援が実現可能になりました。GoogleWorkspaceのような無料プランでも⼗分な機能を提供するツール、開発効率を大きく高められるノーコードツール、初期投資を⼤幅に抑えられるクラウドサービスなど、⼩規模企業でも⼿軽に利⽤できる環境が整っています。

特に注⽬すべきは、ChatGPTをはじめとするAI技術の進歩です。これらのツールを駆使することで、IT専⾨家の⽣産性が従来の数倍に向上し、システム開発や業務改善提案の効率が⾶躍的に⾼まっています。その結果、専⾨家はより低いコストで⾼品質なサービスを提供できるようになったのです。

現実的な解決策

ノーコードやクラウド、Google Workspace などの低コストツールを積極的に活用することで、小規模企業でも無理なくIT化を始められます。加えて、専門家による現状分析で明らかになった問題点の多い業務から段階的にルール化を進めることで、無理なくIT化(ひいてはDX化)への土台を築くことができるでしょう。

たとえば、GoogleWorkspaceはスマートフォンのアプリからでもアクセスできるため、外出先や自宅からでも資料の確認・修正が可能です。Google スプレッドシートを使えば、エクセルと同様の操作感で在庫や売上データをリアルタイムに更新・共有でき、管理担当者の属人化を防げます。さらに、Googleフォームを活用すれば、顧客アンケートや社内ヒアリングを簡単に作成し、集計結果を即座に次の戦略立案に反映できます。無料トライアルや月額数百~数千円のプランを活用しつつ、自社に必要な機能だけを段階的に拡張していけば、小規模企業でも大企業と遜色ないデジタル化効果を得ることが可能です。

まとめ

⼩規模企業のデジタル化は、適切な外部⽀援を受けることで現実的かつ効果的に推進できます。重要なのは、「完璧を求めず、⼩さく始めて⼤きく育てる」という発想の転換です。

現在のIT環境とAI技術の進歩により、⼩規模企業でも⼤企業と同等のデジタル化効果を、はるかに低いコストで実現できる時代が到来しています。経営者は、この機会を活⽤して競争優位性を構築することを検討すべきでしょう。

コラム作成者の紹介

反町 哲弘

専門家の詳細やご紹介は、下記から群馬県中小企業診断士協会までお気軽にお問合せ下さい。