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【業務改善】「省力化」は知恵とお金の合わせ技

中小企業診断士 須田 幸也

「省力化」~現場目線の業務改善~

近年、中小企業の現場で「省力化」のニーズが急速に高まっています。背景には、慢性的な人手不足や高齢化、若年層の定着難といった構造的な課題があり、これらを克服する手段として、省力化が注目されているのです。しかし、「省力化」とは単に「自動化」(トヨタは“働”ニンベンの働を使う・人の働きを機械に置き換える考え方)や人員削減を意味するものではありません。あくまで「少ない力で、最大限の成果を上げる」ための、知恵と工夫に基づく業務改善の一環です。

トヨタ自動車の生産方式では、「改善は知恵とお金の総和である」という考え方が根底にあります。お金をかければ一定の改善は実現できますが、知恵がなければ持続性がない。逆に、知恵だけでは現場の負担が大きくなり、疲弊してしまいます。だからこそ、両者のバランスが重要なのです。

私が支援した、ある金属加工業(従業員15名)では、まさにこの「知恵とお金の総和」の発想で省力化を実現しました。同社では、1人の作業者が加工から検査・梱包までを一貫して担当しており、動線にムダが多く、加工作業中に別の工程が止まってしまうという状況が続いていました。

まず、現場の作業工程を見える化し、工程ごとの時間と負荷を測定。次に、段取り替えの時間や工具の探し物時間といった“見えないムダ”に着目し、作業手順を標準化、レイアウトも変更しました。このプロセス自体は「知恵」による改善です。一方で、検査作業の一部に省力機器を導入するため「お金」も必要でした。結果として、作業者の歩行距離は30%削減され、生産性は15%向上。ベテラン作業者の身体的負担も軽減できました。

省力化のポイント

ポイントは、まず“ムダ”に気づくことです。「探す」、「待つ」、「運ぶ」、やり直すといった動作は、省力化のヒントの宝庫です。特別なIT技術や高価な設備がなくても、知恵と仕組みで十分に成果が出せるのです。もちろん、設備投資を伴う改善には資金が必要です。こうした場合には、補助金などの制度を活用することが有効です。補助制度を上手く活用することで、“お金”の部分のハードルを下げながら、“知恵”を活かした改革が進められます。金融機関や支援機関の皆様には、こうした補助制度の紹介とともに、事業者が省力化を単なるコスト削減ではなく「経営戦略の一部」として捉えるような対話を心掛けています。診断士としては、現場に入り込み、作業者の声を聞き、改善の種を一緒に見つけ、実行まで並走することが重要だと考えています。

まとめ

省力化は、現場の困りごとを起点とした“現実的な業務改革”です。「知恵とお金の総和」という視点を持つことで、無理のない改善、そして持続可能な成長が見えてくるはずです。

コラム作成者の紹介

須田 幸也

専門家の詳細やご紹介は、下記から群馬県中小企業診断士協会までお気軽にお問合せ下さい。